みすみの花が開くとき
また、梯子を昇る。





雪は両手を、染まった頬にあてがっていた。


え、何、このリアクション?





「…聞こえてた?」





白い花が揺れる。


「全部…?」


また、揺れる。





雪は勢いよく頭を下げた。


「あ、あのっ…。ごめんなさい!

あたし…、近衛くんの《好き》っていうのが、その…、そういうのだと思ってなくて…。近衛くんも、柾とか英兎くんと同じように思ってるのかなって思ってて…」

「アウトって事?」


雪は両手を突き出して振った。


「いや、そのっ、そういう事じゃなくてっ、嬉しかったんだけど…」

「…けど?」


雪は目をふせた。


「…あたしの昔話聞いたら、…きっと、すごく幻滅すると思う…」

「花月さんの話なら、なんだって大歓迎だって言ったじゃん」

「でも…。

…近衛くん。…受けとめてくれる…?」

「まだ、信じてはもらってないみたいだね」


雪はまた、手を振った。


「違うよっ!

…信じてるから、話すの…」

「ありがとう。

…受けとめるよ…」


雪は、ぽつりぽつりと、話し始めた。


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