みすみの花が開くとき
…その薄暗い所に着いた途端だった…。

…矢追くんは、あたしを壁際に押さえて、『君の全てが欲しい』って言って…。





いきなり、キスしてきたの。口にね。

…望まない、キス。





…そう。

佐橋くんの時と同じシチュエーションだったんだ。





…びっくりしちゃった。…だって、…その、そういう事って、恋人同士でやる事じゃない?

…あたし、初めてだったし…。





…それに、…怖かった。

声も出なかった…。

頭の中が《なんで?》でいっぱいになった…。





あたしの服を脱がしながら、『好きだ』って繰り返す矢追くんが、人じゃない、獣か何かに見えた…。





そこで、やっと気付いたの。

『あたし、襲われてる』って。





そこで、やっと悲鳴が出た。





…矢追くんの舌打ちが聞こえて、走って来る足音が聞こえて、総兄ぃ達の声が聞こえて…。





最後に見たのは、あたしを抱き締めてくれた紅葉ちゃんと閑ちゃん…。





それと、矢追くんに飛びかかっていく、総兄ぃと柾と英兎くんだった…。


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