みすみの花が開くとき
時計を見る。


「授業、始まってるね」

「…もう少し、近衛くんと、話したいんだけど…」


…かわいいなぁ…。


「誠って呼んで?」





「…ま、…誠…くん…」




…重症だ。名前呼ばれるだけで、こんなに嬉しいなんて…。





「噛んでんじゃん、花月さん」

「…誠くんのアホ…」


雪はそっぽを向いた。


「…雪って呼んでよ…」


頬が弛むのが判る。


「そっちこそ、呼び捨ててよ」


雪は少し、もじもじと黙ってから、口を開いた。





「…誠…」

「雪…」





あぁ、幸せ…。





「雪、何型?」

「A型…」

「あぁ、それっぽい」


雪はそっぽを向いた。


「自分から聞いておいて…」

「ごめん、ごめん。

そのヘアピン、いつも付けてるよね。お気に入り?何ていう花?」

「…うん、気に入ってる。名前はね、《雪割り草》っていうの」

「草より、花の方が好きだなぁ」

「…花もキレイだけど、草も素敵だよ」





そんな他愛の無い会話をして、時間は過ぎた。


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