みすみの花が開くとき
『トイレ』と言って席を発つ。

カップは二つ共空になっていた。





玉兎を捜す。


「玉兎さん」

「なんだい?」


玉兎は店の奥に居た。


「紅茶のいれ方、教えてくれませんか?」


玉兎は溜息をついた。


「雪ちゃんも近衛君も、そんなに営業妨害がしたいのかな?」

「いえ、そういうのじゃなくて…。

雪がお菓子作ってくれるなら、僕は紅茶かなって…」


玉兎は噛みしめるように頷いた。


「なるほどねぇ」

「お願い出来ますか?」

「…いいよ。君みたいなコは好きだし。

代わりに、店を手伝ってくれるかい?」


頭を下げる。


「ありがとうございます…!」

「行きなよ。…女の子を待たせるものではないよ」


玉兎は穏やかに笑っていた。



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