みすみの花が開くとき
「君は何故、あそこに居たんだい?」


優しく、息子にでも話しかけるような口調だった。


「ちょっと、歩き疲れて…」

「…何か、ショックを受けたような顔だね」

「…はい」

「話したい?」

「…いいえ」

「そう…」


カップを空ける。


「ごちそうさまでした」


立ち上がる。


「君、名前は?」

「近衛…。近衛誠です」


店主はにこり、と笑った。


「近衛君。いつでも来ていいよ。

次から、お金はもらうけどね」


…お店だし、当たり前の営業なんだろうけど、この人が言うと、胡散臭さとか、打算とかは感じられないな。

才能なんだろうなぁ、そういうの。


「ありがとうございます」

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