みすみの花が開くとき
T字路。


「誠。…じゃあね」

「あ…」


雪の手を取る。

一瞬、雪の手は強張った。


「…誠…?」

「えっと…。タルト美味しかった」

「…ありがとう…」


雪は困った様に笑った。


違う。そうじゃなくて…。


「えっと…。柾と英兎にぬいぐるみ、渡した?」

「うん…」

「…ヘアピン、大事にするから」

「…あたしも、あの新撰組の犬、大事にするよ」


あれ、犬だったのか。

いや、そうじゃなくて…。


深呼吸。


「…雪。送って行くよ」


よし。言えた。


「…あ、ありがとう…」


…僕、変な事、言ったのかな?



二人は並んで歩きはじめた。

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