みすみの花が開くとき
月蝕
翌日。

ヘアピンは、襟元に差す事にした。





屋上への階段。


雪、今日も居るかな?





屋上に出る。

探す人影は一つ。

それは、すぐに見つかった。





「雪。おはよ」





人影が振り返る。


「誠。…おはよう」


雪は穏やかな微笑みで迎えた。

その髪に、ヘアピンは刺さっていない。


…その微笑みは挨拶なのかも知れない。

でも、初対面の時は顔も見られなかったよな。

進歩だよな。





…その進歩の代償は、僕の心臓発作の可能性だけど。

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