みすみの花が開くとき
「あ…」


少女の短い、溜息ともつかない声は、誠の真ん中に染み渡った。


何、これ?

清水?





澄んでて…。





キレイ…。





手を当てなくても、胸の高鳴りは判った。





少女は顔を伏せ、小走りに誠の横を抜け、声をかける間も与えず、去って行った。





屋上には、少女のほのかで、控えめな花の残り香だけが残った。





胸に手を当てる。





…やっぱり。





一目惚れ?

顔、見えなかったけど。


太陽を睨む。


お前のせいだぞ、コノヤロー。

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