みすみの花が開くとき
杉より遥か高みの月
段々と蒸した空気が流れ初める。

天気予報のアナウンサーは、今年は梅雨入りが早いと言った。





屋上には、しばらく雪は来ていなかった。





今までと同じ時間帯。

肩を叩かれる。


「よぉ。早ぇな、誠」

「よ、柾。お前もな」

「俺は朝練で」


『僕は花月さんに会いに』


言いかけて、口を塞ぐ。





…もし、柾が本当は、花月さんの事、好きだったら?





それが友情じゃなくて、愛情だったら?





柾は口の端を上げた。


「で、どーよ、手応えは?」

「は?」

「メールだよ。城戸さんと、してんだろ?」

「…あぁ。したな」

「なんだよ、反応薄いな。城戸さんは好みじゃねぇか?」

「かわいいと思うけど」

「だよな。幸せモンが」


苦笑。


幸せモンなのか、僕は。そうなんだろうな、きっと。





僕は、城戸さんとメールするより、花月さんの声を聞いてる方がいいんだけど。



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