みすみの花が開くとき
「…花月さんは?」


雪は顔を上げた。


「柾とか、英兎とかじゃなくて、花月さんは僕を信じてくれる?」


言いながら、見とれていた。





素敵だ…。





潤んだ瞳も─




少し悩ましげに歪んでいる眉も─





もう少しで言葉を吐き出しそうな薄く桃色の唇も、全て─





君について、僕が知る、全てが…。





そういえば、僕、顔しか知らないな。

僕、面食いかな?


「…頑張ります」


苦笑。


今はまだ、か。

素直だなぁ。


「…じゃあ、敬語、止めない?」

「…はい?」

「敬語、止めない?」

「…あたしの勝手です」


そりゃそうか。


「じゃあ、それは僕が頑張るよ」





風。





あぁ、気持ちいい。


< 45 / 307 >

この作品をシェア

pagetop