みすみの花が開くとき
「…花月さんにコクった」





背中に、冷たい汗。


補聴器でも買うか。


「…で?」





「キスした。口に」


あ?


「お前は何処のイタリア人だ?」

「どんなツッコミだよ」


あぁ、イタリア人に失礼だな。


「…それだけか?」

「おう」


…妙だな。


「…解った」


手を離す。

購買部に背を向ける。





…妙だ。

いきなりキスなんてした佐橋が悪い。それはいい。





でも、泣くか?





ショックだった、とか?

佐橋とは面識無いはずだし、通り魔強姦みたいなもんか?

いや、それだったら、恐怖か?

どっちにしろ、泣く理由には十分か?





…駄目だ。身体中が熱いままだ。

考えがまとまらない。






僕は、花月さんに笑ってほしい。

花月さんの声が聞きたい。





何であれ、それは変わらない。





高杉先輩。これ《好き》って言ってもいいんスかね?





何でもいいや。





花月さんに笑ってほしい。

花月さんの声が聞きたい。

なら、その為に出来る事をしよう。





僕には、それしか出来ないし。





いつの間にか、普段通りの放送が流れていた。
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