みすみの花が開くとき
スーツ男は机を叩いた。


「座れ、お前ら。

ここの担任の高橋です。

初日なんで、自己紹介しましょう。1番から」





しばらくして、《雪ちゃん》が立った。


「…花月雪です。

えっと、…よろしくお願いします」





…ホント、なんだ、この声?





少しオドオドしてるけど…。





なんか澄んでて─





すぅっと入って来るっていうか─





気持ちいい─





「おい、29番。えーと、近衛誠。早くしろ!」


我に返る。


「あ、えっと…。よろしくお願いします」


疎らな失笑は気にならなかった。





耳の奥では、雪の声がフラッシュバックしていた。


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