みすみの花が開くとき
「なぁ、近衛」

「ん?」

「俺を殴ってくれ」


なんだ、Mか?


「僕には、そういう趣味は無い」

「俺だって、無ぇよ」

「じゃあ、何でだよ」

「俺は、花月さんを泣かした。

十分な理由だろ?俺を殴るには。

花月さんが好きならよ」

「お前を殴って、花月さんの為になるか?」


義成は右手の人差し指を立てた。


元気になったもんだな。


「近衛。お前は冷めてるっつーか、退いてるっつーか、ワガママじゃなさすぎる」

「どういう意味だ?」

「お前、花月さんが好きなんだろ?」

「…僕にも、よく判らない」


義成は溜息をついた。


「じゃ、質問を変える。お前、花月さんをどう思う?」

「どうって?」


義成は眉を寄せた。


「何でもいーんだよ。

花月さんに関して、だ」


胸に手を当てる。





花月さんに関して、か。



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