みすみの花が開くとき
不意に、雪は悩ましげに眉を寄せた。





「聡兄ぃ…」





…誰?

《兄ぃ》って、柾とか英兎よりも古い友達?親戚かも?





「やぁ…、行かないで…」





雪の瞼から、一筋の雫。

思わず、手が伸びる。





…なぁ、聡兄ぃさん。

あんた、今、花月さんを泣かしてるぞ…?





雪の雫は温かかった。




触れる手に気付いたのか雪は瞼を上げた。


「おはよ。捜したよ」





雪は肩を抱いて後ずさった。

その瞳は飢えた獣を見ているようだった。





寝起きでビビらせちゃったかな?

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