みすみの花が開くとき
「…近衛くん、…ですよね…?」


その声は細く震え、硬かった。


「ですけど」

「…本当に、近衛くんですよね…?」

「僕の事、忘れちゃった?」


雪はうつむいた。

見ると、肩を抱く手は微かに震えていた。


とりあえず、落ち着いてもらおう。


「お茶、買って来る」





服の端を掴まれる。





「…居て…、ください…」


その沈んだ声にさえ、身体は反応する。





…こういう時、どうしたらいいんだろう。

柾とか英兎だったら、上手くやるんだろうな。





雪の頭を撫でる。





花月さんの髮、ふわふわ…。

あ、変態っぽい?





「…花月さんの気が済むまで、居るから」


もっといい台詞が有るんだろうけどさ。


「…ありがとう…、ございます…」


そのまま、しばらく雪の頭を撫でていた。


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