彼は
鎖を解いた
母が出て行ってから掃除を済ませ、調理に取り掛かる時。
家の電話が鳴った。
濡れた手をエプロンで拭きながら電話のある場所へ走る。
電話をとると男の声が聞こえた。
一瞬、母の知り合いかと構えるが、母の知り合いならば母のケータイにかけるかと考えを訂正する。


『あなたの両親は不幸な事故に遭われ、即死でした』


電話の向こうの相手はそう言った。
何かの冗談だと思った。
悪戯かと、すぐに理解することはできなかった。
思考が停止し、何も言えなくなる。


『すぐに××病院へ来てください』


電話は切れる。
受話器を耳につけたまま立ち尽くす。
まだ信じることはできない。
本当なのだろうか。
もし本当なら、私は自由になれるのだろうか。
考えていても仕方がない。
とりあえず病院へ行こうと動き出した。
少し遠い病院だ。
徒歩で行くのは難しいため、タクシーを呼んだ。

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