彼は

「4600円ね」


タクシーを降りる際に運転手のおじさんに料金を支払う。
細かいお金がなかったため、1万円を渡した。
両親はおこずかいなどくれるはずがないため、両親に秘密でアルバイトをし、自分で貯めていたお金を使っている。
ケータイの料金も自分で支払っていた。


「ありがとうございました」


そう言ってタクシーを降り、ドアを閉める。
指定された病院へ行き、事務へ事情を話すと事務員の女性が案内してくれた。
案内役を男性と交代したようで、今度は男性についていく。
エレベーターに乗り、男性は地下を押した。
案内の板には霊安室と書いてある。
案内された先に両親の姿があった。


「お母さん、お父さん……?」


顔に白い布がかけられている。
布を取り、二人の顔を見た。
その瞬間、思わず叫びそうになる。
何とか叫ぶのを堪え、後ずさった。
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