彼は

「あ……あ……」


言葉が出なかった。
両親の“カタチ”は原型を留めていなかった。
これは本当に両親なのかと疑ってしまうほど、彼等はぐちゃぐちゃだった。
ミンチ状の肉、潰れた目玉、頭からはみ出ている脳のようなもの。
頭はぱっくりと割れ、頭蓋骨が覗いている。


「う゛ぇ……ぁ」


吐きそうになるが必死で堪える。
手で顔を覆った。
涙が出た。
溢れ出して、止まらない。


「ふ、ぐ……ふっ……」


両親は死んだ。
ここでやっと理解することができた。


何故私は、泣きながら笑っているんだろう。
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