彼は
こんなにも簡単に手に入った。
私がずっと求めていたもの。


「私は、自由だ!」


もう誰にも縛られることはない。
私の鎖は解かれた。
もう怯える必要はない。
人並みの生活を送ることができる。

それが嬉しくてたまらない。
嬉しくて嬉しくて、笑いが止まらない。
世間一般の人々には酷い娘と罵られてしまうだろう。


「お父さん、お母さん、さよなら」


笑顔で、どこにもいない両親に向けて呟いた言葉だった。
その声は空気に溶けて消えた。

両親の遺品を片付けている時に、あるものを見つけた。
それは一冊の小さな母子手帳。
興味本位でパラパラとめくってみる。


「写真……?」


手帳にはハート型や星型に切り取られた写真が一枚一枚丁寧に貼り付けられていた。
その横には何やらコメントが。
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