彼は
「菜々美、おはよう」
私の名前を呼んで、笑顔を向けてくれる彼。
そんな彼に私も笑顔を向ける。
幸せを感じる瞬間だった。
「夏目君、朝ご飯作るけど何か食べたいものある?」
「菜々美が作るものならなんだっていいよ」
台所に立ち、ベーコンと卵をフライパンで焼き始める。
フライパンに蓋をし、その間にオーブントースターでパンを焼く。
いつも両親のために行っていた事が今は自分と夏目君のため。
そんな何気ないことまでもが嬉しさの対象となる。
「夏目君は卵は半熟と硬めどっちが好き?」
リビングのソファから台所にいる私を先程からずっと見つめている彼に声をかける。
見られているとやり辛いのだけれど。
「半熟が好きかな」
「わかった。夏目君、待ってる間テレビでも見てなよ」
「テレビなんかよりも菜々美を見てたいんだ」
一々私の顔を熱くさせるようなことを言う彼。
思わず目を逸らした。