彼は
ジュッと音がしたかと思えば、右の上腕部に熱を感じた。
熱い、痛い。
熱さと痛みは同じ感覚なのだと誰かが言っていたっけ。


「ああ、あ……っ」


小さく呻く。
上腕部には母が今まで咥えていた煙草が押し付けられていた。
勿論煙草には火がついたままだ。
あまりの痛みに涙が零れた。


「ごめんなさい…ごめんなさい…!」
「わかってくれたならいいの」


そう言うと私から離れ、再びソファにに座ってテレビをみ始める。
頬や腕が痛い。
特に腕は皮膚が焦げ、それに若干肉が見えている。
傷口にも煙草の灰のようなものがついている。
救急箱から消毒を取り出し、傷口に当てる。
ビリビリとした痛みが走る。
傷口にガーゼを当て、応急処置を済ませた。
そして泣きながら部屋の掃除を再開する。
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