彼は
「悪い子の菜々美が何かを食べられるわけないでしょ?」
母に腕を掴まれた。
先程煙草を押し付けられた上腕部に爪を立てられる。
痛みに顔を歪める私の姿を笑って眺めている母。
まるで悪魔だ。
「お母さん……」
「んー?」
下を俯いたまま話す。
泣いてる顔を見られたくなくて。
痛くて泣いているわけではない。
とても悲しかったからだ。
「私を、産まなければ良かったのに」
初めての反抗だったかもしれない。
それを言葉にすることが私にできる精一杯の反抗だった。
悔しかった。
折角、初めてできた私の居場所をいとも簡単に奪ってしまう母が、どうしようもなく憎かった。