私とあいつ
前までは、
あいつは私の後ろの出席番号だった。
第一印象はかわいい。
目がパッチリしてて、キレイな二重で、背が小さくて、小柄で、ちょこちょこと歩く姿を見てそう思った。
一年生の最初の席は出席番号順だ。
必然的に私とあいつは前と後ろに並んだ。
すごくかわいかったから、私はずっと「かわいい」と言っていた。
そしてそれを聞いて「かわいいって言われても嬉しくない…」と膨れていたあいつを見て、もっと「かわいい」と私は言いまくった。


二年生になってもそれは変わらなかった。
また同じクラスで出席番号も変わらなかった。
私が前であいつが後ろ。
二年生最初の席も私が前であいつが後ろだった。
あいつは二年になって、元からすごかったかわいさとバカさに拍車がかかったようだった。
この二つが掛け合わされた時は半端なくかわいかった。
そのかわいさから、あいつは先輩に告白されていた。
何人かと付き合っていたみたいだけど、どれも長続きしていなかった。
いつも最後には私のところに来て話した。
「先輩たちみんなさ、かわいいんだよ。こんな俺のこと好きって言ってくれるいい人ばっかなんだよ。でもさ、…やっぱ、忘れられないや。」
そう言ってあいつは悲しそうに笑っていた。
誰のことが忘れられないかは聞かないでいる。
聞いてはいけない気がするからだ。

三年生になっても私とあいつの関係は変わらないと思っていた。
ただの友達。

たまに遊びに行ったりして、恋話とかバカ話で盛り上がる。
普通の男友達よりかはちょっとだけ仲のいい友達。
それだけだった。

それだけが、私とあいつ、――…幹久の関係。

それだけだったはずなのに。


なんで、三年になった途端に関係が変わろうとしてんの?
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