君との距離は1メートル 【完】
「うわっ!都会ジャーン!ここら辺田舎だしあんまり合わないんじゃねーの?」
須藤君は目を丸くして否定しまくった。
確かに便利なんだけど…
私は1番最初にここに来た日の夜を思い出す。
「確かに便利だしいいけど、ここは星も綺麗だし海も見えるし最高だよね!」
今まで見たことのないほどの星の数や家から見える海なんて、経験できないからここへ来て体験する全てのことが新鮮だ。
「杏奈がそうおもってくれてんなら良かった」
隣にいる誠君が私の顔を覗き込む。
優しい柔らかい表情でなんだか心が落ち着かない。
「当たり前だよ」
そんな感情から逃れたくて私はすぐ顔を伏せた。
「ていうか、誠君と須藤君は友達じゃないんだね?」
とりあえず話題を変えたくて2人に話をふってみる。
「ああー、そりゃねぇ」
須藤君が誠君と顔を見合わせる。
「光の友達ってだけで俺たちは別に接点ないしな〜、あ、でもサッカーとかの試合でもしかしたらあってるかも!」
ぽん、と手をついて須藤君は大きい目をますます大きくさせた。
「そーかもな。でも顔なんて覚えてねーや」
「そっか、普通そうだよね」
私はウンウン、と頷きながら光君しか友達のいないこの集まりの中に入ってこれた須藤君を凄いな、感心した。
人懐っこそうな顔に性格まで人見知りしなくて…
だからこんなにも早く打ち解けられるんだ。
「あ、私帰んなきゃ」
不意に声を発したのは奏子だった。
「え?もお?」
光君と仲よさそうに喋っていた愛巳が話をやめて奏子をみる。
「うん、これからお母さんの誕生日ケーキ買いにいかなきゃいけなくて、ごめん!帰るね!」
パチン!と顔の前で両手を合わせて奏子は荷物を持って「バイバイ!」と言って帰ってしまった。
「あ〜、でも5時かー。すっげー遊んだなー」
壁にかかっていた時計を見て須藤君が伸びをする。
「俺たちもそろそろ帰ろうかな」
「あ、あたしも…」
愛巳のためにも…そうしたほうがいい気がした。
愛巳の恋を応援するんだから。これ位しなきゃ。
「本当?杏奈まだ暇?」
「え?うん。暇だけど…」
私が答えると誠君が顔を明るくさせてた。
「そしたら大通りの方いかない?前のカフェのお店とか気になるし。まだ大通り全部見れてないだろ?」
なるほど、私のためにそういってくれてるんだ!
私は直ぐに頷き「うん!」と答えた。