君との距離は1メートル 【完】




「え?光に?」



キョトンとした顔でこっちを見る誠君にウンと頷く。






「なんか優しい笑顔だよね。2人とも」




「初めていわれた〜、光と似てるだなんて」




嬉しそうな顔をする誠君。何度見てもその笑顔は光君にそっくりだった。















「またね。バイバイ」




私の家に着いて誠君は手を振ってさらに道を進んでいく。




「暗いから気をつけてね!バイバイ!」



誠君が道を曲がって見えなくなるまでちゃんと見送ったあと、家に入った。


「ただいま〜」





帰ってきたのは8時半過ぎ…




あ!9時にベランダにいかなきゃ!!




途端に気持ちが高ぶりはじめて階段を駆け上がる。




「ちょっと杏奈〜?」



が、下からお母さんの呼ぶ声が聞こえて足を止める。



もう!急いでるのに!!




「なにー?」



若干イラつき気味でお母さんに聞き返す。



「ご飯あるけど食べるのー?」



あ、ごはん。すっかり忘れてた。
でもそんなにお腹は空いていない。




「いらなーい。おやすみー」



それだけ言ってまた階段を上る。

おやすみ、なんて嘘だけど。







ガチャ





部屋に入り電気をつける。



そっとカーテンを開けるともう光君があっちのベランダに出ていた。



ヘリに頬杖をついている。


今日は早いな…。






私は窓を開けてベランダに出る。


音が聞こえたからか、光君はぱっとこっちに振り向いた。




「今日は早いんだね?」



「ずっとここにいたから…」




ゆっくりと体をこっちに向ける光君。


心なしか、声が少し元気がない。




光君はヘリに足をかけて上がるとピョンとこっちにジャンプした。



私の部屋のベランダに入るとそのまましゃがむ。




「あの…中はいろ?」




いつもと雰囲気が違う光君…。




不意に夕方の事を思い出した。




あの冷たい目。やっぱり私に向けられたんだ。



怒ってるの?私なにかした?



「今日は、ここで話そうよ」



光君は顔を私の方に上げないままベランダの壁に寄りかかる。




「…うん」



私も隣に座って光君の言葉を待つ。
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