君との距離は1メートル 【完】




……。





長い沈黙。ヒューと冷たい風が頬をさす。




ぶるっと身震いをした時、隣の光君がかすかにこっちを向いた。









光君の方に顔を向けると、光君も顔を私の方に向けていて





月明かりに見えた光君の顔はなぜか悲しそうだった。







「え…光君…」





「杏奈ちゃんは、誠と仲がいいんだね」



でも、悲しい顔はすぐにまたいつものあどけない笑った顔に戻った。




一瞬すぎて、気のせいだったのかな…?





「う〜ん。そうだね。学校の中だったら1番仲の良い男の子だと思う」




というか、男の子の友達は学校に誠君ぐらいしかいないし。





「そうなんだ。てか、カフェどうだった?」




「あー!美味しかったよ!私は2度目なんだけどまたアイスココア頼んじゃった」







なんだ、いつも通りじゃん。

勝手に悲しそうとか怖いとか思っていい被害妄想だよね。



心の中で光君に謝る。






今日もまた1時間ぐらい喋って、そろそろ帰ろうかと立ち上がった。





「杏奈ちゃん」


「うん?」



立ち上がった光君の顔を見上げる。


「その…。杏奈ちゃんは誠の事…」




だんだんフェードアウトしてく声。
光君の顔はどこか緊張気味だ。



「ん?なに?誠君がどうかした?」




光君の顔を覗き込むように一歩近づく。



「なんでもない!お休み!」




その瞬間、まるで逃げるようにいっぺんに言うとヒョイっとヘリに登ってまたあっちのベランダに帰っていった。




は、はやい…。
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