君との距離は1メートル 【完】
もう、それからはひたすらぼーっとしていた。
杏奈ちゃんと目があってたのに動けなくて、愛巳に声をかけられて我に返ったり。
愛巳が話してくれてるからそっちに集中しようとしても、時々誠(柴田)と杏奈ちゃんを盗み見てしまう。
時々盗み見ても、いつだって2人で喋ってるし…。
「あ、私帰らなきゃ」
突然細川が言葉を発した。
5時か…。細川の発言に他のみんなもそろそろ帰る流れになっている。
少しほっとして心が軽くなった。
杏奈ちゃんも帰るみたいだし誠(柴田)も帰るだろう。
杏奈ちゃんは隣だし、誠とはもう一緒にいないだろうし。
「本当?杏奈まだ暇?」
「え?うん。暇だけど…」
ほっとしたのもつかの間、一気に地獄に落とされた気がした。
恐る恐る誠(柴田)の顔を見る。
誠は杏奈ちゃんが暇だけど…と言った途端表情を明るくさせる。
…完璧好きじゃん……。
「そしたら大通りの方いかない?前のカフェのお店とか気になるし。まだ大通り全部見れてないだろ?」
誠(柴田)は幸せそうな顔で杏奈ちゃんを見下ろす。
「うん!」
杏奈ちゃんも嬉しそうに返事をする。
俺は何故か焦って必死に頭を働かせる。何をすれば。というかなんでこんなに焦ってんだ。