君との距離は1メートル 【完】
俺はバタン!!と勢い良くドアを閉めた。
母さんは俺の気持ちなんて知らないくせに…。
母さんの言葉が心に突き刺さる。
「いいムードだったんだけどな〜」
なんだよ、いいムードって。
なんだよ、付き合ってるの?って。
ご飯を食べ終わって上に上がったのは8時半ごろ。
そうだ。杏奈ちゃん帰ってきたのか?
そっとベランダに出て部屋の明かりを確認する。
けど、まだ帰って来てはないようだ。
また心が荒れる。
まだ遊んでんの?誠と何話してんの?
誠が好きなの?
気持ちに気付いた日から失恋フラグが立っているなんて…。
ぼーっとベランダで頬杖をついたまま考えこむ。
あはは…
どっからか笑い声が聞こえる。
2つの声でそれはどちらも俺がよく知ってる声…。
大通りのある方の道から杏奈ちゃんと誠が歩いてるのが見えた。
やっと帰ってきたんか。
2人は少し何か喋った後、すぐに分かれて誠は帰って行った。
杏奈ちゃんは誠が曲がって見えなくなるまで外で見送っていた。
それは、杏奈ちゃんの優しさか
誠を想っているからか…。
後者の方をすぐに頭から消すように頭を振る。
まだ分からない。俺も頑張れば…
杏奈ちゃんが家に入るのを見てから、5分もせずに隣の部屋に明かりがついた。
ガラッとベランダが開く音がしてそっちを見る。
「今日は早いんだね?」
ニッコリと笑ってこっちを見る杏奈ちゃん。
「ずっとここにいたから…」
俺は体を杏奈ちゃんの方に向けて小声で答える。
そらからいつものように向こうのベランダへ飛びうつる。
そのままベランダの壁にもたれかかるように座った。
「あの…中はいろ?」
戸惑ったように杏奈ちゃんが俺の顔を見る。少しだけ困った顔をして。
「今日は、ここで話そうよ」
今日は部屋に入りたくない。なぜかそう思った。
「…うん」
杏奈ちゃんも隣に座る。