君との距離は1メートル 【完】
ちらっと目を上に向けて誠君を見る。
「あ、ああ…うん。気づかなかったよ。てか誠でいいよ!そんな仲良くないわけじゃないし」
キョロキョロと目を動かしてこっちをみようとしない誠君。
「そお…?てか、どうかした?」
明らか落ち着きがないんだけど…
「ううん。なんでもないよ。ほら!腕もう大丈夫だろ?持って持って!」
がしっと手を掴まれて看板を掴まされる。
「ええ~。けちぃーー」
パタパタと顔を赤くさせながらどこか行ってしまった。
暑かったのかな?
「ねぇ、杏奈」
看板の微調節をまだする明美ちゃんに呼ばれてそっちをむく。
いつになったら終わるのかな…。
「なに?」
「柴田君と杏奈は付き合ってるの?」
「ええ?!」
あまりに思いがけない質問につい大きな声が出てしまった。
「な、な、なんで?」
ありえ無さすぎでしょ!
「いやぁ~だってねぇ。名前で呼びあっちゃう位だから仲いいのかなって」
ニヤニヤしながらこっちを見る明美ちゃんが最高にキモチワルイ。
「付き合ってなんかないよー。仲のいい友達!」
「へー。なんだつまんない」
何を期待してたの?!
やっと明美ちゃんの微調節が終わり腕も開放された。
他に手伝うことを探すべく教室に戻る。
「あ、杏奈~!きてきてー!」
奏子が黒板の近くで手まきをする。
そこには愛巳とさっき逃げていった誠…君?がいた。
「なになに?」
「今ね、光君とビデオ通話してるの!須藤君もいるよ!」
ドキン…
光君…。
急に鼓動が速くなるのを感じながら奏子達のほうに歩いていく。
「今ね、杏奈も来たよー」
奏子がスマホの画面に向かって喋る。
愛巳と奏子の隙間から私も顔を覗かせる。
「あ、杏奈ちゃん?」
聞こえてきたのは光くんよりもちょっと高い声の須藤君だった。
「そうだよ。須藤君久しぶりだね!」
髪が少し伸びて色も黒くなったようなきがする。
「な!みんなで遊んだ日以来かな?元気にしてた?」
「うん!」
須藤君と久しぶりに話せて嬉しいけど…
私が聞きたいのは…
「あ、杏奈ちゃん?」
この声だ。