君との距離は1メートル 【完】




ちらっと目を上に向けて誠君を見る。



「あ、ああ…うん。気づかなかったよ。てか誠でいいよ!そんな仲良くないわけじゃないし」




キョロキョロと目を動かしてこっちをみようとしない誠君。



「そお…?てか、どうかした?」



明らか落ち着きがないんだけど…



「ううん。なんでもないよ。ほら!腕もう大丈夫だろ?持って持って!」



がしっと手を掴まれて看板を掴まされる。


「ええ~。けちぃーー」



パタパタと顔を赤くさせながらどこか行ってしまった。


暑かったのかな?






「ねぇ、杏奈」




看板の微調節をまだする明美ちゃんに呼ばれてそっちをむく。


いつになったら終わるのかな…。



「なに?」




「柴田君と杏奈は付き合ってるの?」



「ええ?!」



あまりに思いがけない質問につい大きな声が出てしまった。




「な、な、なんで?」




ありえ無さすぎでしょ!




「いやぁ~だってねぇ。名前で呼びあっちゃう位だから仲いいのかなって」




ニヤニヤしながらこっちを見る明美ちゃんが最高にキモチワルイ。




「付き合ってなんかないよー。仲のいい友達!」



「へー。なんだつまんない」


何を期待してたの?!









やっと明美ちゃんの微調節が終わり腕も開放された。



他に手伝うことを探すべく教室に戻る。





「あ、杏奈~!きてきてー!」




奏子が黒板の近くで手まきをする。


そこには愛巳とさっき逃げていった誠…君?がいた。



「なになに?」




「今ね、光君とビデオ通話してるの!須藤君もいるよ!」




ドキン…




光君…。




急に鼓動が速くなるのを感じながら奏子達のほうに歩いていく。




「今ね、杏奈も来たよー」


奏子がスマホの画面に向かって喋る。





愛巳と奏子の隙間から私も顔を覗かせる。





「あ、杏奈ちゃん?」




聞こえてきたのは光くんよりもちょっと高い声の須藤君だった。



「そうだよ。須藤君久しぶりだね!」



髪が少し伸びて色も黒くなったようなきがする。



「な!みんなで遊んだ日以来かな?元気にしてた?」




「うん!」



須藤君と久しぶりに話せて嬉しいけど…




私が聞きたいのは…


「あ、杏奈ちゃん?」



この声だ。


< 138 / 384 >

この作品をシェア

pagetop