君との距離は1メートル 【完】
「誠が杏奈の事を好きなのだってそれこそ学校が一緒なんだからわかるよ?
でも、きっと杏奈は違うの。杏奈も光なんだよ」
愛巳の言葉に鋭いナイフで心臓を一突きされたような痛みが襲う。
「知ってる。見てれば分かるよ。例えそうでも諦めたりしないから」
俺も愛巳の目をしっかり見て宣言した。
愛巳はにっこり笑うとまた視線を戻した。
「私は、小さい頃から光が大好きなの。
でも、光はあんなにカッコよくて人気者で中学からは付き合わないかってヒヤヒヤしてた」
愛巳はポツリポツリ思い出を話す。
「でも、私も努力して皆に私達はお似合いなんだって、一緒にいることで分からせようとした」
だんだん震える愛巳の声。
ちらっと見ると大きな目には涙を浮かべて今にもこぼれ落ちそうだけど必死にこらえてるのがわかった。
「でも…杏奈が来て、6人で一緒に遊んだときに光は私と話してるのに杏奈ばっかり見て、挙句の果てにこんなことにもなって…
長い片思いが一瞬で壊れてしまうのが信じられなくて…。
それこそ、まだ光の事なんて知らない転校生にとられるなんて思うと本当はムカつくの」
初めて愛巳が他人の事をムカつくなんて言ってるのを聞いた。
「でも!それは違うって分かってるつもり。長い片思いが特別じゃない。きっと光にとって運命の出会いなんだと思う。
杏奈だって悪くない。全部私の嫉妬ってわかってる。
…けどっ…だけどっ」
もう涙を我慢する事無くボロボロ流しながら愛巳は喋る。
「私だって好きなんだもん!諦められない!ずっと、ずぅーーっと、光だけ見てきたのに!
どうして?!光の初めて恋した人が杏奈なの?せめて知らない人がよかった。
友達じゃない人が良かった!」
声をあげて泣く愛巳がぎゅっと俺の袖を掴んできた。
慰めるように優しく抱きしめて背中をさする。