君との距離は1メートル 【完】
光 side
「ただいま〜」
「あら、おかえり。文化祭どうだった?」
俺が家に帰るや否や、リビングからひょっこりと顔をのぞかせる母さんに質問攻めにあった。
本当は行きたかったのよね〜
とか言ってたから余計色々聞きたいんだろうな。
「うん、良かったよ。沢山食販あったし」
俺はリビングに行ってコップにお茶を注ぎながら母さんに言う。
「そーだったのねー。私も杏奈ちゃんとか愛巳ちゃんに会いたかったわ〜」
残念そうに眉を下げる母さんは食器洗いを再開した。
「ご飯できたら言って、上行ってるから」
俺は母さんにそれだけ言って自分の部屋のある2階に上がった。
今日は沢山歩いて疲れた。
おまけに走ったりもしたし…。
ベッドにダイブしてうつ伏せになる。
杏奈は、俺の気持ちに気付いてるのだろうか。
ふと思った事。
だって、今日だって2人で回ろうと愛巳達から離れて行動しようと手を引っ張って走り出したりして…
普通だったら可笑しいと思う事だし…。
気付いてるけど気付いてないふりされてるのか
本当に気付いてないのか
分からない。モヤモヤする。
「はぁ〜〜」
深いため息をついて時計を見ると午後6時を指していた。
9時まではまだまだ余裕がある。
今日、やっと本当に2人になれる。
そう思うと自然と笑みがこぼれる。
この時間がなかったらこんなに杏奈と喋る事も仲良くなることも無かったかもしれない。
隣の家で、たった1メートルの距離だったからできることなんだ。