君との距離は1メートル 【完】






………えーと。




今のは絶対私の口からでた言葉じゃない。





「奏子?本当に…?」




奏子が言ったんだよね。




『私も、光君が好きだったの…』







ゆっくりと顔を上げる奏子に私は何も言えなかった。




「4月にサッカーの試合で応援に行ったの。その時に愛巳の所に光君が来て知り合いになったんだけどね、

話すうちに光君の事好きになってたの」




「うそ…」






今までそんなの聞いたことないし、素振りだって見せなかったのに…。



どうして今になって言う気になったの?





「うそじゃないよ」




ははっと笑ってどこか懐かしむように天井を仰いだ。





「でも愛巳が光君の事好きなの知ってたし、私は好きになっちゃ駄目って言い聞かせてた。

好きな人が友達の好きな人で、その友達の恋を応援するのがどれだけ辛いか分かる?」





「ううん…。だったら奏子だって私と同じで「違うよ!」






いきなり奏子が怒鳴ったのでビクッと体が震えた。




奏子の目には涙が溜まっている。






「消えちゃったの!好きって思いが!愛巳の事考えすぎて消えちゃったの!

だから杏奈には私みたいになって欲しくないのっ!!」





奏子のためていた涙はもう躊躇なく頰を伝う。




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