君との距離は1メートル 【完】
「私、光君が好き」
震える声で私は愛巳に告げた。
目をそらさず、まっすぐ。
それを聞いても愛巳はちっとも驚いた様子を見せない。
愛巳も私から目をそらさず、見つめる。
「私、文化祭の時ぐらいから光君の事好きだなって思って…。
ただ、愛巳の方が先に好きだったし応援するって言った手前そう言えなくて…」
あれ?
これじゃあまるで愛巳を責めてるみたいじゃない?!
「いや、それを愛巳のせいだなんて言ってるわけじゃないの!
私から応援するって言ったのにそれは無いよなって思ってたから」
私は慌てて手を振って否定する。
「でも、奏子に話したらちゃんと愛巳にも伝えなきゃダメだって言われて、私も伝えなきゃって思ってたから…」
なんだかまとまらないな…
自分の語学力を恨みながら喋る。
「私の事どう思ってくれても全然いいの。でも、私も光君の事好きになったっていう事だけはどうしても変えられなくて、わかってもらいたくー」
愛巳が私の顔の前に手を出したので私は口を閉じた。
それは、もう喋るなと言ってるように捉えるしかなかった。
「うん。なんとなく分かってた。杏奈が光を好きなこと」
愛巳が微笑みながらそう言った言葉に私は耳を疑った。
愛巳、気づいてたの?
「好きな事を否定するなんてとんでもないもの。それに光を好きな人なんて私達だけじゃなくて光の学校に沢山いると思う。
いとこってだけでそれ以上特別なわけじゃないもん。
私も杏奈も、光に恋をする女の子の1人だよ?」
「あ、いみ…」
愛巳はまた私にてをかざして言葉を遮る。
「私も杏奈もライバル。でも、それ以上に大切な友達だから」
そう言うとふふっと愛巳は笑った。
「可笑しいよね?恋するだけでこんなに
クサイせりふ言っちゃうんだもん。ドラマとか漫画みたい」
あぁ、やっぱり愛巳は愛巳だ…。
そのさっぱりとしているけど優しい性格にみんな安心してしまう。
だから誰からも好かれるんだ。
「私はクリスマスに告白するけど…杏奈どうするの?」
急にテンションの上がった声の愛巳が恐ろしいことを口に出した。
「そ、そんな!まだ考えても無いよ!」
「え〜〜私とっちゃうぞ〜」
「そ、それはイヤだけど!でも愛巳が彼女になったら祝福する!!嬉しい!」
「なにそれっ!」
あはははーー…
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ーー…
愛巳とだいぶ遅くまで話しこんでしまった。
「帰らなきゃね。またね愛巳」
「バイバイ、杏奈」
まだ走るという愛巳とは公園で別れた。
坂を登る私はちょっと振り返って公園を見る。
そこには、もう愛巳の姿はなかった。
あぁ、話してよかったな〜。
私も頑張ろう!愛巳のように、可愛くなりたい。
「よしっ!」
私は自分に小声で喝を入れて家への道を急いだ。