君との距離は1メートル 【完】







「光、誠」






飾り付けをされた教室に着くと、透き通るような軽やかな声で名前を呼ばれた。





「あん?吉野何?」





振り返ると、そこにはサッカー部のマネージャー

吉野真麻(よしの まあさ)


がいた。





「今日分かってると思うけど部活は無しだから。その代わり振替休日の明日はあるからね?」




スラッとしたスタイルで目が大きいけどクール系の顔。二つ結びが特徴のいわゆる美人さん。




って、誠が前に言っていたのを思い出した。







でも確かに吉野は誰が見てもモデルの様な容姿をしてると言える。




だから余計土だらけでほこりっぽい場所でやるサッカーはなんだか不似合いだった。





でもマネージャーの仕事は誰よりも上手にこなす。仕事ができるとサッカー部のみんなから評判がいいし。




「了解。ありがとう吉野」




俺はお礼を言って教室の中に入ろうとした。





「光、今日は後夜祭…で、でるの?」




振り返る寸前に吉野が探るように聞いてきた。
そんな恐る恐る聞かなくても…。







「そのつもりだけど?」





「私も一緒にいい?友達がみんな軽音だから見る人いなくて」






「ああ、いいよ。誠も一緒だけど」





「だけどってなんだよ?!」




ついでのように言われたのが気に障ったみたいでこっちを睨んできた。




「ふふ、いいよ。また後でね」




吉野は小さく笑うとくるっと後ろを向いて自分の教室に歩いて行った。


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