君との距離は1メートル 【完】
さあ、フルート教室に行かなきゃ。
いつもは奏子と歩く道を今日は1人で歩く。
「んな…杏奈っ!!」
「はい?!」
誰?!
急に呼ばれた声に勢いよく振り返る。
すると、そこには誠がいた。
「あれ?誠部活は?」
「今日はオフなんだ。あのさ、この後…時間ない…?」
誠は目をそらして恐る恐る聞いてきた。
「あー、ごめんね。今日はフルート教室なんだ」
なにか用があったんだろうけど、急用かな?
「急ぎの用事だったりする?」
「あ、いや、違うんだけど…」
歯切れの悪い返事をする誠はうーんと唸ったり頭を掻いたりして挙動不審になってる。
「ふふっ、どうしたの?」
あまりにもおどおどしてるから笑ってしまった。
「あ〜、あの、日曜日空いてる?」
日曜日?
なにもないけど、なんなんだろう。
「ないよ?」
そう答えると誠の目がきらきらと輝いた。
「まじ?!俺の母さんが吹奏楽団のチケット2枚もらったらしいんだけど…いかない?」