君との距離は1メートル 【完】
吹奏楽団、と聞いた瞬間耳がピクリと動いた。
「どこの団体だろ?」
それによって聴くか聴かないかが決まるんだけど。
「なんか外国の結構有名なところらしくてさ、たまたま知り合いが楽団の人の知り合いで貰えたらしいんだけど…
でもその人この日用あるらしくて。だから杏奈がいるかなって思ったんだけど」
誠ははにかみながらカバンを探ってなにかを取り出した。
「これ、チケット」
はい、と言って手渡されたものを受け取る。
えっ?!こ、こ、これは…!!!
「これ、ウィーンの楽団じゃん?!」
ぎゃああああ!!!スッゴイ!!
勝手に1人で興奮して声が裏返ってしまった。
「すごいすごい!ウィーンなんて凄すぎ!絶対行きたい!」
私は誠の手をとってブンブン振った。
「わかったわかった」
クスクスと面白そうに私を見て笑う誠は手を離すと私の頭に手を置いた。
「また後で連絡するから。じゃあフルート頑張って」
「うん!またね!」
私と違う方へ進む誠に大きく手を振ってから、私はチケットをしっかりとお財布にしまった。
やった〜〜!プロの演奏を生で聴けるなんて!
テンションが上がりっぱなしで鼻歌を歌いながら教室までの道を歩いた。