君との距離は1メートル 【完】
自分の気持ち?
なんのことだろう…。
「え?恋のライバルにちゃんと言えたんでしょ?」
あぁ!そのことか!
私が難しい顔をしているからか、美春先生も難しい顔をして確認してきた。
「あ、はい。ちゃんと言えました。私の気持ちを」
「そう、良かったわね。そしたら恨みっこなしじゃない?」
美春先生は視線を下げると寂しそうに微笑んだ。
「良い恋愛なんて学生のうちにしとくものよ」
微かに揺れている先生の瞳が
何かあったのかと思わせる。
「美春…先生?」
そっと声をかけると、ハッとしたように美春先生は目をあげた。
「恋愛なんてきゃあきゃあいってられるのが楽しいってこと!
ほら!ロングトーンの続きやるよ!」
先生はいつもの調子に戻ってフルートを構えなおした。
「はい…」
私も膝の上で冷たくなったフルートを持ってリッププレートに唇をのせて息をフルートに入れる。
美春先生も、恋愛してるのかな?
難しい恋なのかな?
恋をしてから、いろんな人の恋に敏感になっている気がしなくもない。
「ほら!何考えてる?!しっかりと息を入れる!!」
「は、はいっ!」
また別の事を考えてるのを見破られ怒られてしまった。
私はフルートのレッスンに集中した。