君との距離は1メートル 【完】
「あれ?光くーん」
ちょっと大きい声で呼びかけてみる。
あれ?ベランダの窓開いてる?
おっかしいなぁ。閉めたと思ったんだけど。
不思議に思ってココアを机に置いてそっちへ向かう。
あ、もしかして光君が開けたのかな?
「光くーんいるのっー」
突然グイッと腕を引っ張られてボスッと何かにあたった。
「った〜!なんなの…」
何が起きてんだかさっぱり分かんない。
立ち上がろうとすると頭が何かに押さえつけられて動かない。
く、苦しい!!
「静かにっ」
上の方からボソッと小さな声が聞こえてきた。
「え?光君?」
「そー、ちょっと静かにしてて」
私の頭を押さえていたのは光君の手らしくて、よく考えてみると私は今光君の胸の中に飛び込んでいるような状態。
や、やだ!!
考えてしまったら急に恥ずかしくなってすぐに光君から離れた。
「ごめん、呼ぶ声が聞こえたらまずいと思って」
ベランダの壁に寄りかかって座る光君はクシャッと髪をいじりながら謝ってきた。
でも、手が邪魔でその表情は分からない。
「ううん。でも、呼ぶ声が聞こえたらまずいってどういうこと?」
さっきまでの事をわすれなきゃと思って平静を装うけど、胸の高鳴りは中々消えなくて。
だって、一瞬だけど、勘違いかもしれないけど…ぎゅっと抱きしめられたから…。
思い出すだけで顔が熱くなってくる。
いや!勘違いかもだけど、飛び込んでしまったとき頭が押さえつけられたと思ったら
一瞬だけ、優しくぎゅーっと体が締め付けられるような感覚があって。
本当に一瞬だけど、その一瞬はやっぱりそれまでとは違う苦しさを感じたよ。