君との距離は1メートル 【完】
誤解される事が嫌なんだよ。
私が好きなのは光君だよ。
そう言えたらいいのに。でも、愛巳を思うと今は言うことなんてできない。
違う。私に勇気がないだけだ。
今言ってしまったら、振られたら
それが怖いだけなんだ。
愛巳の事はただの言い訳だよ…。
「…もう、帰るね」
クルッと踵を返して光君はベランダに出た。
「光君っ!!」
慌てて叫んで後を追いかけるけど、もう光君は自分のベランダに戻って部屋に入ろうとしていた。
「まって!!」
走って追いかけてベランダのふちに捕まるけど
もう向かいの窓は閉められた後だった。
「はぁ…はぁ…」
1メートル。たったその距離がこんなにも私と光君を困らせる。
「もう…どうしたらいいの?」
ガクッとその場に座り込んでしまった。
ポタポタと冷たい涙が膝を濡らす。
「光君…光君…」
呼んでも大好きな人の姿は現れなくて。
私には分からないよ。これから私はどうしたらいいの?
誰か教えて……。