君との距離は1メートル 【完】
「ごめん、それからありがとう。
こんな俺の事を好きになってくれて」
深々とお辞儀をする。
これが俺にできる愛巳への感謝の行動。
「で?ちゃんと返事してね?」
え?と顔を上げると愛巳は腕を組んでツンと横を向いていた。
「答えはわかってる。でもちゃんと言って欲しいの」
確かに。
伝えてくれたならしっかり答えなきゃ。
いくら答えが分かっていても、伝えなきゃ意味はない。
俺は顔を上げて愛巳を見つめた。
愛巳も横を向くのをやめて視線をこっちに戻す。
それから組んでいた腕を下ろした。
その表情はすっかり柔らかくなって、これから俺が言う言葉を
受け止めるよ。
そう言ってるようだった。
「俺は杏奈が好きなんだ。
だから、付き合えない。ごめん」
「…うん。ありがとう」
愛巳は目を細めてニコリと笑った。
「クリスマスは頑張って。
きっと、大丈夫だよ」
ポン、と俺の肩に触れるとすぐに愛巳は横を通りすぎた。
「え?愛巳?」
クルッと振り替えると、手を振りながらこっちを見ないで歩いていく愛巳。
追いかけるのは…やめよう。