君との距離は1メートル 【完】
「杏奈、昨日はごめん。ちょっと話したいんだ」
杏奈の冷たい目を見つめ返す。
「私はもう会うのやめようって言ったから。話しがあるなら別の方法にしよう」
いつもの笑顔や優しい声は面影も無く、まるで別人だ。
「でもちゃんと顔を合わせて話したいんだ」
ここで引いてたまるか。
「お願いだから、今日だけでも話せない?」
どうして杏奈はそんなに会いたくないのか。
やっぱり…会えない理由はそういうこと?
「ごめんね。もうやめたほうがいいと思うから。電話とかにしよう?」
さっきよりも柔らかい口調と瞳で謝ってきた。
「ねぇ、会いたくないってどこまで?これじゃあ、普通に話す事も出来ないじゃん」
頑として会うことを拒む杏奈に一歩詰め寄る。
「そうだよ!これからは2人で顔を合わせて話すことなんて出来ないの。
本当なら恋人同士じゃないんだから、こんなの可笑しかったんだよ」
「あ、んな…」
それってつまり…俺とはもう会いたくないって事?
俺の事そんなに嫌いだった?
カッと怒った目で睨まれて、激しい口調でそう言われて唖然とした。
まさかここまで怒るなんて…思ってもなかった。