君との距離は1メートル 【完】
友情と恋 杏奈side
『さよなら』
あの日の光君の驚いた顔が忘れられない。
自分から言ったこと。
自分の恋心なんかより愛巳との友情を選んだから。
これで良かった。これで良かったんだ。
光君と顔も合わせず、連絡も取らず12月になった。
あの日が終わってその週の日曜日はちゃんと誠とウィーンのコンサートも見に行ったし、フルートもいつも以上に頑張って先生からもらった難しい曲もこなした。
全部、全部、光君を忘れられればいいと…。
さよならを言う前の日、愛巳にどんな顔をして会えばいいか私には分からなかった。
「杏奈!今日元気ないね?」
心配そうに私を心配してくれる愛巳。
「保健室行く?」
この子も光君が好きなんだよね。
「ううん。大丈夫!」
「そお?無理しちゃダメだよ」
こんないい友達を裏切るような事、悲しませるような事…して良いわけないよね。
「愛巳…光君にクリスマスに告白するの?」
なぜか聞いてしまった。
突然の質問にもちろん驚いた表情をした愛巳だけど、すぐに表情を戻してた。
「う…ん。そうしようかなって」
どこか歯切れの悪い返事だけどそれを聞いて私は決意できたの。
「そっか!頑張って!」
「え、あ、杏奈もね?」
ライバルなのに、どこまでも優しい愛巳。
なら、私は諦められる。