君との距離は1メートル 【完】
「杏奈、顔上げて」
すぐに光君の優しい声が聞こえた。
ゆっくり顔を上げて光君の顔を見る。
光君の表情は真剣な表情から柔らかい、私の良く知ってる優しい顔になっていた。
「許してあげる。それと俺もごめん」
光君は一歩身を引いて私と同じように頭を下げた。
「いやっ!私が悪いから!謝らないで!」
私が悪いのに謝られたら!申し訳なさすぎる!!
私の慌てた様子をチラッと見ると光君は顔を上げた。
「じゃあ、愛巳が俺に告白してきたのも…」
「うん。知ってるよ。それから、好きな人がいるからって振られちゃったって…」
「え?!あいつそこまで言ったの?!」
かあっと顔を赤くさせて目を見開いた光君。
手で顔を隠して後ろを向いてしまった。
「ひ、光君、好きな人いるんだね〜?」
探るみたいな言い方だったかな〜?なんてビクビクと心配してたけど気になって仕方ない。
もし、分かってしまったら。どうしよう。
「えっ。うん。好きな人は…いる」
光君は前を向いたけどまだ顔は赤いまま。
「そっか〜…。叶うといいね。その恋」
今の私はこれしか言えない。
しかも叶うといいね、なんて。