君との距離は1メートル 【完】
「ねぇ、杏奈」
光君がさっきより低い声で話しかけてきた。
「な、何?」
ドキッとして一瞬返事が遅れちゃった。
また光君は真剣な表情に戻ってこっちを見ていた。
「好きな人…いる?」
「えっ…」
な、なにをいきなり!しかも、光君からなんて。
私の反応を見て好きな人がいると確信したのか
「誰?」
と聞いてきた。
だ、誰って!!
じっと見てくる光君。
意識したら恥ずかしくなって顔が熱くなってきた。
きっと今私真っ赤だ。
光君だ、なんて今はまだ心の準備ができてないよ。
「ひ、秘密だよ!言えないよ!」
火照った頰を手であおいで冷ます。
12月なのにあつすぎだよ。
「そ…っか。でも、すごくその人の事好きみたいだね」
光君は慌てる私を見てクスッと笑った。
「ええ〜、そうだけど〜」
好きな人が目の前にいるのに、その人の事を言ってるのに、
光君は別の誰かを想像してるんだろうな。
つまり、私なんてなんとも思ってないのかな?