君との距離は1メートル 【完】
「あ、それなんだけど25日は新しくできた水族館行かない?」
誠がスマホをいじってほら、と画面を見せてきた。
スマホを覗き込むとそこには確かに新しくできた水族館があった。
たしか電車で4駅くらい先の場所。
「いいよ!行こう!時間とかはまたLINEで連絡するね!」
「分かった。じゃあ、また25日な」
誠は部活行くわ、と言って手を振って行ってしまった。
「…ふ〜ん?水族館?誠と?」
はっ!!
「なに、奏子」
いつの間にいたのか、奏子が壁にもたれかかって手を組んでこっちを見ていた。
その顔はいくらか不服そうだ。
「なんでクリスマスに誠となの?光君は?」
「クリスマスはただ誠が遊ぼうって行ったから行くだけで…」
ズンズン迫ってくる奏子に語尾が小さくなる。
「なんで?!普通好きな人と過ごすでしょ?誠じゃなくって!」
「でも先に約束したのは誠だから」
まぁ、まぁ、と興奮する奏子をなだめる。
その言葉にピクリと眉を動かすと奏子ははぁーーーと、長いため息をついた。
な、なんで??
「あのねぇ、クリスマスっていう特別な日は特別な人と過ごすものでしょ?なんでオッケーしちゃったのよー」
がっくりと肩を落とした奏子。
まるで自分のことのような落ち込みようだ。
「う…ん。あんまり深く考えてなかったから」
別にクリスマスだから、とか特別考えてなかったな。
「まぁ、いいや。杏奈がいいなら」
肩をすくめて諦めたようにぶっきらぼうに呟いた。
「奏子は?誰かと過ごすの?」
前に好きな人いるって言ってたし。