君との距離は1メートル 【完】
奏子はジッとこっちを見てから顔をそらして視線を下に向けた。
「誰とも?すごさないけど」
「そっか〜。好きな人は、どう?」
あれから何も聞いてないけど、なんかあったかな?
あんまり深くは聞かないでおこう。
ドキドキしながら待ってると奏子が口を開いた。
「私の好きな人には好きな人がいてね、きっと両思いでもうすぐ叶いそうなの」
奏子は静かにそう言った。
「その人が幸せになれるなら私も幸せなの。そしたら私も吹っ切れる気もするし」
はは、と苦笑いをすると奏子は
「よし、行くよ」
と言ってドアに向かって歩き出した。
な、にそれ…。
何も言えなかった私。だって、そんなの辛いに決まってるけど…
諦めないで、って言葉も
辛いね、って言葉も
全部違う気がしたから…。
ーっ…
私は何も言わず奏子を駆け足で追いかけた。