君との距離は1メートル 【完】




奏子はジッとこっちを見てから顔をそらして視線を下に向けた。




「誰とも?すごさないけど」




「そっか〜。好きな人は、どう?」



あれから何も聞いてないけど、なんかあったかな?
あんまり深くは聞かないでおこう。

ドキドキしながら待ってると奏子が口を開いた。




「私の好きな人には好きな人がいてね、きっと両思いでもうすぐ叶いそうなの」




奏子は静かにそう言った。

「その人が幸せになれるなら私も幸せなの。そしたら私も吹っ切れる気もするし」




はは、と苦笑いをすると奏子は


「よし、行くよ」


と言ってドアに向かって歩き出した。



な、にそれ…。


何も言えなかった私。だって、そんなの辛いに決まってるけど…

諦めないで、って言葉も
辛いね、って言葉も




全部違う気がしたから…。





ーっ…



私は何も言わず奏子を駆け足で追いかけた。




< 319 / 384 >

この作品をシェア

pagetop