君との距離は1メートル 【完】



「あ、もうすぐで着きます!」




約5分。本当に近いのに車で送ってくれるなんて。


優しいカップルだな。




「あ〜…あれかな?誰か立ってるとこ?」




誰かたってる?



遠野さんがあそこ、と指をさす。




「えっ…」



遠野さんの指の先には確かに私の家。


じゃなくてその隣を指していた。



光君の家…。それに立っているのは……。





「そ、その隣の家が私の家です」



なんで…。


ふいにポケットが震えてケータイを取り出して見てみると一件のLINE。




『外で待ってる』




光君から。

暗いから誰だか明確に分からなかったけど、やっぱりあれは光君。





顔が熱を持ってあつくなる。


美春先生も遠野さんもいるのに〜〜!


絶対顔赤いよ〜!



「隣ね。じゃあそこら辺に止めるか」



「いえ!!!ここで!!ここで!!!」



慌てて遠野さんにお願いしする。



「えっ、なんで?遠慮しないで」



はにかむ遠野さん。


ちぃーがぁーーーう!!




「大丈夫ですから!本当に!」



必死でお願いをするけど遠野さんはいいから〜と言って車を進める。



「あら、男の子。もしかして…」




家に近づいて光君の事がはっきり見えたんだろう。
美春先生がニヤリと笑ったのがミラー越しに見えた。



「ボーイフレンドかしら?」


「ちがいますっ!!」




恥ずかしくてきっと真っ赤のもバレバレ。

だってこのまま会ったら美春先生達に一生からかわれる。
毎回のレッスンで質問攻めだ。



「春馬!家まで送り届けるのよ!」


美春先生のいつも聞かない楽しげな声。

絶対楽しんでる。
顔を見たいとか、どんな子なのかとか、これからどうするのか、とかその他もろもろ。


美春先生ってそういうの大好きだろうな。


LINEを返信してないまま車は私の家の前に止まった。



「ねぇ、彼氏じゃないの?待ってくれてるんじゃなくて?」




美春先生が後ろを向いて聞いてきた。

「彼氏じゃないですけど、ちょっと仲良の良い友達です」



本当の事だもの。


自分で言って少し傷つくのはおかしい。

「もしかして、例の好きな人かしら?」




ギクッ!!


私の表情が変わったのを美春先生は見逃さなかった。


美春先生鋭い…。




「ふ〜〜ん…。ねぇ、春馬…」




興味なさげに言うと美春先生は遠野さんにコソコソ話しを始めた。



何話してんだろ…。

気にしながら窓から光君を見る。



はぁーと、手を擦りながら息で温めてる。


パーカーにマフラーして…いつから待っててくれてるんだろ。




早く駆け寄ってごめんねって言わなきゃ。




「ふふ、オッケー。じゃあ杏奈ちゃん行こっか」



内緒話しは終わったみたいで遠野さんは可笑しそうに笑って外に出てしまった。


行こっかって、もう家そこなのに?!




急いで鞄とフルートを持ってドアを開けようとすると勝手にぱかっと開いた。
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