君との距離は1メートル 【完】



2人の対照的な態度。


「外で君が待ってるっていうから。でも返すのは勿体無いしな〜」



遠野さんが肩に置いてた手を今度は私の頭に乗っけて撫で始めた。




借りるとか返すとか…私はオモチャじゃないんですけど…。




「無理です。返して下さい」




光君がすっと近づいたと思うと私の腕を引っ張った。



「うわっ」





危うく転びそうになったけど、光君が受け止めてくれた。

やっ、どうしよう!




一気に緊張で体がかたくなる。



「あ〜あ、まぁ、今日はいいや。また明日ね?」




遠野さんは肩をすくめて振り返って車の方に歩き出した。



途中でウィンクまでして。





「ごめん、光君」





すっと光君から離れて乱れた髪の毛を直す。


結局遠野さんの行動は謎に包まれたままだったけど、なんか色々やばかったな。



「杏奈、あの人と付き合ってんの?」




上から不服そうな声が聞こえて見上げると、光君のイライラとした表情が街灯に照らされて見えた。


「違う違う!あの「でもなんで2人で車から出てくんの?なんであんな馴れ馴れしいの?てか明日もってどういうこと?」




光君はかがんで私と目線を合わせてきた。


真剣な目には違う感情も混じってるみたいでゆらゆらと揺れている。



「違うの!あの人はフルート教室の先生の彼氏さん!明日もっていうのは多分フルート教室で会うからだと思う!」




「え、彼氏さん?」



光君の気の抜けた声にコクコクと頷く。



「そう!車の中に彼女さんもいたよ!」




「え、な、なんだ、え!まじか!」







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