君との距離は1メートル 【完】
『それではー!これからイルカショーを始めさせていただきます!イルカ達のパワフルな技をお楽しみください!』
アナウンスが入ってハッと我に返った。
「イルカショー楽しみだね!」
隣の誠に笑いかける。
「だな。あ、イルカ」
誠が水槽に向かって指をさす。
「え、どこ?」
目をさ迷わせてると水面からイルカがジャンプして現れた。
「わぁ!!」
他のお客さんたちからも歓声が上がる。
「わぁ…って、きゃーー!!」
ザッバーーンと音を立ててまた水中に潜るイルカ。
入った瞬間に水しぶきがかかった。
「ほらー!濡れたー!!」
隣の誠もビショビショだ。
「あはは!凄い濡れてる」
「お前もだよ!」
文句を言いつつも楽しそうに笑う誠。
「あー、楽しかった〜」
約30分間のステージだったけど、大満足だ。
「な、楽しかった。でも、すっげー濡れたよな〜」
ははは、とお互い顔を見合わせて笑う。
二人とも髪の毛はもちろん、服もビショビショだ。
「でも、いい思い出だよ。私と最前列なんて初めてだし」
小さい頃は混んでて中々最前列って行けなかったけど、高校生にしてやっと夢の最前列。
「俺も初めてだな。親に濡れるからって行かせてもらえなかったし」
「あ、それも分かる〜」