君との距離は1メートル 【完】



「あ!まってまって」

ベランダに出た時、笹野さんの引き止める声がした。え?と後ろを向くと、すぐそこに笹野さんがいた。


「これ、お礼デス」


両手で差し出されたものを見ると、その手の中には袋に詰められたクッキーがあった。


「や、私が作ったものじゃないしちゃんとお店のだから安心して!」



中々受け取ろうとしない俺に笹野さんは慌てて付け加えた。


「いいの?」


俺はカーテンをかけることしかしてないんだけど…


「もちろーん。これからも仲良くして欲しいから、そのー引越しの挨拶も兼ねて?」


えへへ、と笑う笹野さんは俺の左手を持ってその手のひらにクッキーをぽん、と置いた。


「はい、それじゃまたね!」

それだけ言うと、笹野さんはまた部屋の片付けに行った。



と、とりあえず戻ろう。

俺もベランダのヘリに立ってまた隣りに向かってジャンプした。


クッキー…素直に嬉しい。
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